いとなみ研究室

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上田皮ふ科

遊びたい人、この指と~まれっ!まるで家族のようなあたたかいコミュニティを、これからも守っていきたい。上田皮ふ科 中村晃子さん

取材・文

写真

今年5月に新大村駅の近くにてリニューアルオープンした上田皮ふ科。

今回は、そこで腸活指導を担当する中村晃子(あきこ)さんを取材した。患者さんへ食事のアドバイスをしながら、個人では、オンラインで全国各地の生徒にファスティングや腸活の指導もしているそうだ。

 実は中村さんの仕事はこれだけではない。「花みずき」というコミュニティスペースを営業して、人と人が繋がる場所づくりに取り組んでいる。みんな食堂、コーヒー焙煎体験、リース作り、米ぬかカイロ作りなど。大人も子供もわくわく遊べるワークショップを開き、「楽しい!」を共有できる“チーム”を築いてきた。

 そんな活動の根底には、「引きこもりの自立支援」、「貧困支援」、「心と体を健康に」という三大目標が中村さんの心の中に根付いているのだった。

 「落ちるとこまで落ちましたからね。」優しい笑顔で語る中村さんは、過去にうつ状態を経験。昔の私のように支援を必要としている方へなにか届けたい、という一心で活動される中村さんのこれまでの人生を伺った。

ある日子供が不登校に。カーテンの開かない家に、自分も閉じこもった

大村市出身の中村さんは、四年制の大学を卒業した後、建築会社で営業の職に就くも、ストレスで会社を2年でやめた。転職したのは、とある不動産の会社。結婚するまでの5年間勤め、やがて夫と対馬に引っ越した。

 二人の子供を出産したあと大村へ戻ってくるも、夫とは破綻。前職の不動産に再就職した。

 「私生活も出戻り、仕事も出戻り、でしたね。」

 諫早に勤務することになった中村さんは、子供のために一生懸命働いた。母親の介護もしていた中村さんは、朝、子供よりも先に家を出ることが多かったそう。

 するとある日、小学4年生の娘が学校に行かなくなった。

 「学校から『来てません』って連絡があったり。行ったとしても、『帰りたいって言ってます』とか、『おなかが痛いとか足が痛いとか言ってます』とか。朝から行かない日がどんどん続いていきました。」

 「家に一人残していると、火を扱うこともあって。家にいさせるのが恐ろしい状態でした。」

 子供のリズムに合わせながら仕事をするために、正社員を辞め、大村でパート勤務に切り替えた。将来は在宅での仕事を、とも考えていた。

 そんな中、もう一人の子供も不登校に。微熱が一ヶ月以上続き、朝起きるのもやっとな状態。やがて部屋から出られなくなってしまったという。

 原因の分からない不登校の子供たちに対して、「学校に行かないなら勉強ぐらいしたらいいのに。お皿ぐらい洗ってくれたら」という怒りの感情が芽生えた。仕事、家事、育児、母親の介護をこなすシングルマザーの中村さんは、とにかく必死だったのだ。

 LINEのタイムラインに「助けて。」うつ状態の自分ができた最大の叫び

「“行ってもらわないと困る“が一番頭にありましたね。本当は子供のことをしっかり考えてあげられる親だったらよかったんですけど、なんせシングルマザーで。」

 「学校に相談に行っても、シングルマザーだからなのか、お子さん寂しいんですかね~、会話する時間をつくってくださいね、って言われて。傷口に塩をぬってるんですか?っていうような言葉だけしかもらえない。」

 「親や身近な人からは、接し方が悪いんじゃないかと言われる。周りが全部敵であるかのような、責められるような気持ち。子供のことをしっかり見守って、どんって構えて、いいよ休んでても、なんて言えるような余裕は一ミリもなく。なんかもう、ピリピリキリキリなってました。」

 こんなに頑張っているのに、味方は一人もいない。「私が悪いのかな。」そうして精神的に追いやられているうちに、体も壊れていった。

 「過食がひどかったので、体重増加が半端なかったです。半年で10キロ増え、一年半で18キロ。そしたらやっぱり、どんどん疲れやすくなる。体は重いし、いくら寝てもすっきり起きれない。」

 「ストレスが全部、子供に対する攻撃になってましたね。言葉の暴力はひどいし。むしろ仕事に行ってる間は、仕事のことしか考えなかったので平穏なんです。家に帰った瞬間、地獄が待ってるみたいな。子供はかわいそうだったと思います。『お母さんは毒親です』って言ってました。(笑)ちょっと落ち着いてからですね。」

 「カーテンは開かない。子供のご飯はつくってあげられない。買い物もいけない。布団から出られない。動けない。もう、一種のうつ状態ですよね。」

 体も動かず、頭も回らなかった中村さんが、人に助けを求めようとして思いついたのは、チャットアプリ「LINE」のタイムライン。「うつっぽい、助けて。」と投稿した。これが、当時の中村さんにとっての最大の叫びだったのだ。

 知人から勧められたファスティングが、体と思考を変えてくれた

すると、その投稿を見た数名の友達から連絡があった。助けてくれたのは、PTAのママ友や、幼稚園の時からの友達など。食事を届けてくれたり、家の掃除をしてくれたり。子供を預かってくれたこともあった。

 友人からの支援により、中村さんの体調は回復、精神も安定してきた。そのころ知人に勧められたのが、ファスティングだった。

 「今まで食事制限のダイエット成功したことがないんですよ。でもファスティングは違うよって言われて、じゃあやってみようかなって始めたのがきっかけです。」

 アドバイザーの方に指導してもらいながら断食を行ったところ、なんと一か月半で体重が10キロも落ちたそうだ。さらに数回重ねるうちに、睡眠の質が爆上がり。自律神経も整えられ、心も元気になっていった。

 それから10カ月後、ファスティングをたくさんの方に経験してほしいと、オンラインで指導を始めた。SNSでたくさんの誤った情報に溢れる中、効果的かつ安全な方法を日本全国の生徒に向けて発信している。

 人に指導をする際に役に立ったのが、「パーソナルシード」というコミュニケーション学だ。人の特性を生年月日から紐解き、それを理解することで人間関係が円滑になるというもの。この知識をファスティングの指導に取り入れ、ひとりひとりにあったアドバイスを心掛けた結果、生徒から嬉しいフィードバックが返ってきた。

 さらにこの学びは、自身の子供たちとの関係にもいい影響を与えた。

 「子供たちのことを、わがままだとか、何でこうなんだろうとか、思わなくなったんです。自分と相手との違いを尊重できるようになったので、腹を立てることがなくなりました。」

 そうして暗闇から抜け出すことのできた中村さんは、過去の自分が必要としていた支援をしたいと、さまざまな活動を始めた。

 どん底に落ちることで気付いた、困っている人が本当に必要なもの

大村市古町にあるコミュニティカフェ「花みずき」。もともとは孤立した高齢者の方のためのチャットスペースとして、週二日営業していたそう。ご縁があり、三代目オーナーとして店を受け継いでからは、年齢問わず参加できるワークショップや食堂などを定期的に開いている。

 「火起こしやってみたい!とか、ナイトウォークやってみたいよねとか。子供から大人まで、やってみたいひと、あつまれーっ!みたいな感じで。(笑)」

「そういう遊びって、ひとのエネルギーになる。楽しくなってみんなが幸せになると、人に幸せを渡せるようになるんです。」

 わくわくする遊びを呼びかけることで、人が集まり、繋がれる。大人も子供も一緒に遊び、幸せを共有することで、まるで家族のようなあたたかいコミュニティが生まれる。

 全部ひとりで抱え込んで、つぶれてしまいそうだったあの頃、福祉施設などではなく、「人との繋がり」に助けられ、日常的に人とのかかわりを持っておくことがいかに大切なのか実感した。求めていたのは助言でも批判でもなく、助け合える仲間だったのだ。

人の痛みに寄り添える、やさしい中村さんの周りに集まってくる人は、同じように心のやさしい、あたたかい方ばかりだ。そうして育んだコミュニティは、シングルマザー、貧困層の方、引きこもりの子供など、さまざまな方に向けての支援へつながっている。

 「シングルのお母さんが、一人で一人のお子さんを育てるというよりも、三人のお母さんで、三人の子供たちを見るみたいな、互助の世界があったらいいなと。「自分一人では抱えきれないストレスを人と分かち合える場が必要だと思って。常に誰かと繋がっておくことで、助けられるんじゃないかと思っています。」

 「引きこもりの子供へ向けた支援の一環として、畑を借りて野菜を育てています。不登校になった子って、学校にいけない自分はダメな子だって、自分を責めだすんですよ。そういう子供たちの自信を取り戻せる場所になればいいなと思って。植物を育てるのって、情緒にもいいですし、無理やり外に出そうとするんじゃなくても、例えば、植物の成長過程を動画編集するとか。それが自信にもなるし、もしかしたら仕事になるかもしれない。」

 「私、幼い頃から貧困なんです。大学に入ってからは、実家の家計が破綻して、仕送りが一切途絶えたこともあります。生きるためのお金を稼ぐ方法として、デジタルスキルの勉強会を今度から開きたいなって思ってて。貧困から抜けられれば、底上げになっていく。それが自分の目指すところだと思ってます。」

 「基本的に遊ぶことしか考えてませんからね。(笑)素晴らしい活動なんかしてなくて、普通に楽しんでます。やりたいからやってるんです。いつでもお茶しに来てくださいね。」

家族のように何でも話せて、助け合える関係性を築いていきたい。これまで育んできた大切なコミュニティを守るため、そしてこれからもたくさんの人と巡り合うため、今日も楽しく笑顔で歩いていく。

心と体はつながっているんですよと語る中村さん。毎日ポジティブに前へ進むことができているのは、日ごろ意識している「腸活」のおかげだ。

「腸はチョー大事!」をモットーに、上田皮ふ科においても指導に力を入れている。患者さん一人ひとりに対して細やかな診察を行うクリニックとタッグを組み、体の内側からの健やかな肌作りを推進中だ。あの日、自分を変えてくれた腸活が、誰かを救うきっかけになればという想いで。

 

 

 

会社情報

会社名:
上田皮ふ科
所在地:
長崎県大村市小路244−7
Tel:
0957-47-6707
Website:
https://uedahifuka.com/

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