おいしいの声が、一番の活力。【上田皮ふ科】社員食堂『スナックPΛΛK』 スタッフ・中尾さん
取材・文・写真
新大村駅から徒歩5分の場所にある、「上田皮ふ科PΛΛK(パーク)」。
PΛΛKという名前には、”公園のように誰でも気軽に訪れる場所になってほしい”という上田院長の想いが込められています。
患者さんの悩みにじっくり寄り添った適切な治療が評判のクリニック。院長はもちろん、スタッフの皆さんは朝からテキパキ笑顔で、次々とやってくる患者さん一人ひとりと真摯に向き合います。
そんなスタッフの元気を支えているのが、社員食堂「スナックPΛΛK」です。
毎週金曜日のみオープンし、出来立てほかほか、彩りも栄養も満点なお弁当が食べられます。毎日忙しいスタッフの健康を気遣い、新しいクリニックでは社員食堂を作ろうと計画していた上田院長。2年前のリニューアルオープンの際に、スタッフが会話しながら食事を楽しめるスペースを設けました。そのおかげか、以前よりもスタッフ同士の会話が増えたそう。
今回の記事でご紹介するのは、せっせと手際よく料理をつくる社員食堂のスタッフ、中尾さん。「そんなに大して話せることはないけど...」と謙遜する中尾さんに、上田先生はこう言いました。
上田院長「中尾先生は、月に一回ボランティアでトイレ掃除を、もう6年も続けていらっしゃるんです。私も、人から言われたらやろうかなと思いますが、継続するにはやっぱり思いがないとできないと思うんです。そこをぜひ、子供達に知ってほしいんです。」
今回の記事では、そんな中尾さんの社員食堂にかける思いや、ボランティアのことについても教えていただきました。
「手間をかけるのが好きなんです。」
今日のメニューは、豚肉とチンゲン菜の中華炒め、じゃがベーコン、ワカメスープにオレンジ、マスカットの生ハム巻き。
中尾さん「彩りと栄養は考えています。あるスタッフさんは、お母さんに『こんなの食べたよ』と写真を撮って送ってくれているそうで。皆さん『今日もおいしかったです』とか、『レシピ教えてほしいです』と言ってくださるので、作り甲斐がありますね。」
なぜ上田院長が中尾さんを「先生」と読んでいるのかというと、もともとスタッフの子供さんが通っていた保育園の園長先生だったから。
保育園を卒業後、「アンチドトロピンⅢエコノミークラス症候群」という血流の持病を持ち、日々血流促進のため「足を動かす」を欠かせない身体状況だったことから、クリニックの掃除スタッフとして勤務していたという中尾さん。
その頃から時々、家で作った料理をスタッフに振る舞っていたと言います。芋の天ぷら、ゼリー、杏仁豆腐などなど、どれも手間がかかるものばかり。
「美味しいって言われると、のぼせるから。」と笑う中尾さんは、誰かの笑顔が力につながっているようです。そんな様子を見ていた上田院長は、中尾さんに社員食堂のスタッフになってほしいと何度もアプローチ。初めは「資格もないし、プロでもないから」と断っていたそうですが、上田先生の根気強い推しに負けて、ついに社食を始めました。
メニュー考案から、食材の買い出し、調理、盛り付けまで中尾さんが中心になって行います。ノートには、盛り付けの配置と、作る順番がきっちりメモされていました。限られた予算のなか、栄養もあって美味しいご飯を用意するのは、決して簡単なことではありません。それでも中尾さんは、「忙しく働くスタッフの午後からの元気のために」と、およそ30人分のお昼ごはんをせっせと作ります。
メニューはどうやって考えているんですか?と尋ねると、「これは全部、私の母の味なんです」と中尾さん。
中尾さん「私、母のような人になりたかったんです。母も料理を作るのが好きで、私が子供の頃、母の料理を配って回ってたこともあります。牡丹餅とか、かまぼことか、蒸したり揚げたりして作ってたんですよ。私も今、こうやって料理を作って出してるから、『ああ、母がいるな』と思って、嬉しくなる。」
中尾さんが大切にしたいこと
さて、話題はボランティアで6年間続けているという、トイレ掃除について。こんなに長い間継続されているのは素晴らしいですが、きっかけはなんだったんですか?
「古くからある市立の休憩所のトイレなんですけどね。以前利用したとき、トイレの存在はありがたかったし、助けられたけど、汚かったのです。いつかは掃除ボランティアをしたいと思っていて。知り合いに話したら、私も一緒に行くよって言ってくれて。今は月一で掃除に行っています。市の境にあるトイレだから、気持ちよくお迎えするためにも。」
これまで約50年間、福祉関係の仕事をしてきた中で、「次の人ことを考えて」ということを大事にしていたと言います。ティッシュがなかったら補充する、洗面所に残した水はきちんと拭き取る。なんでもない小さなことですが、今も中尾さんの中で残っています。
「人にアピールするためにしてるわけじゃないから、ひそかに、気持ちがいいトイレであったらと思って。気負ってするわけでもないし、自然体でしてるから、苦ではない。『気付きを築く』っていう言葉を、ある先生から頂いたんですけど、気付くことをいっぱい積み重ねて生きなさいって。それを実行できたらいいなと常に思いますね。」
「福祉の仕事をずっとしてきたから、何か役に立ちたいっていうのは思ってる。」
美味しそうに和気あいあいとご飯を食べるスタッフの皆さんを、微笑ましそうに見る中尾さん。愛情たっぷりのお弁当は、お腹と心を満たし、今日も元気に患者さんと向き合う活力になっています。
プロフィール
社員食堂スタッフ
中尾さん



