地元大村のあまくておいしい野菜と、2つのこだわり調味料。体も心も満たしてくれる「麹の腸活ポタージュスープ」
今年5月、大村市黒丸町にオープンした「café universal」。
“universal”とは、「すべての人の」という意味。上田皮ふ科院長の上田厚登さんが描く「世界中の誰もが生きやすい社会」の在り方を、ここ大村の地から発信している。
大村湾が一望できる素晴らしいロケーションに建つのは、真っ白いテント。
大きな窓からたくさんの光が差し込み、店内を明るく照らす。
メニューを見てみると、「麹ツナマヨネーズ」や「麹キーマカレーソース」など…。お食事系のメニューにはすべて「麹(こうじ)」が使われているようだ。
その中でも今回紹介するのは、「麹の腸活ポタージュスープ」。おいしさの秘訣を探っていこう。
あま~い野菜を生かす、麹のやさしい味
「こんにちは~!!よろしくお願いします!」
明るい声ととびっきりの笑顔で取材に応じてくださったのは、店長の山口栄子さん。
田中「スープ、とってもおいしかったです。やさしい味付けで、何杯でも食べられそうでした。」
山口さん「ありがとうございます。ちょうど一昨日から、ジャガイモのスープに変えたんですよ。」
使用する野菜は、月一程度で新しいものにリニューアルするそうだ。先月はトウモロコシ、その前はにんじんを使っていたとのこと。
「にんじんは、お隣の農家さんから分けてもらいました。いっぱい収穫されていたのが見えたので、相談に行ったら快く分けていただいて。大村って、野菜や果物が豊富ですごくおいしいんです。」
地元の新鮮な食材を使ったポタージュスープ。トウモロコシは、「中嶋農園」の広大な畑で採れた、甘くてジューシーなものを使用した。野菜を分けてくれた農家さんも、こんなにおいしいスープになるんですねと、毎回喜んでくれるそうだ。
「手軽に栄養が摂れるので、スープだけを買いに来られる方もいます。この前はあるお客様から、1歳のお子さんがストローで飲まれている写真が送られてきて。おかわりしていっぱい飲みました!って。うれしいですね。」
なめらかな舌触りになるよう、野菜を何度も裏ごししてつくるスープは、離乳食の赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで、誰でもおいしく食べられる。まさに、ユニバーサルなメニューだ。
酵素たっぷり、愛情たっぷり。
やさしい味付けの秘密は、ふたつの麹調味料。
米麹に塩を入れて作った「塩麹」。米と水を入れた、砂糖不使用の「甘麹」。この2つの自家製調味料を使って、使用する野菜に合わせて味を調える。くせのないシンプルな味付けは、野菜本来の甘みを生かす。
麹とは、米・麦・大豆などの穀物に「麹菌」を繁殖させたもの。この麹菌がもつ「酵素」が、ひとの体にたくさんのメリットをもたらすのだ。酵素は、栄養を吸収しやすいように分解するため、食べ物を消化する胃への負担が軽減される。胃腸を休ませることで、自律神経が整い、睡眠の質が改善する。また、腸内環境が整うことで美肌にもつながるなど、いいことづくしだ。
スープのほか、ホットサンドにも麹調味料を使う。さらにはスムージーにも、フルーツと麹を発酵させて作った酵素シロップを使用し、健康的なメニューとなっている。そのアイデアは、どこからきたのだろう。
「長崎新聞に載っていた“ある方”の記事を見てすごく感動して。私も以前から、家で麹調味料をつくっていたんですけど、より深く知りたいと思って、その方が開催されている発酵調味料の料理教室に通ったのがきっかけなんです。」
“ある方”とは、大村市で麹教室の講師をされている、坂井泉子(もとこ)さんのこと。坂井先生が作る麹は、無農薬の米や天然の塩でできており、非常に上質なものなんだそう。発酵させる過程で音楽を聴かせるのも、良い菌を育てるのに重要なんだとか。
坂井さんのことを記事で知り、健康について意識するようになった山口さんは、麹について理解を深めるべく料理教室に通った。
そうして得た知識や技術を持ち帰り、メニューの開発に取り組む。カフェをプロデュースする黒岩功シェフからのアドバイスを参考に、おいしくて体にもやさしいメニューを考えた。
「いろんな失敗をして、試行錯誤を重ねて、その過程も楽みました。スタッフのみんなで和気あいあいとやってて、自分の人生にまたひとつ、やりがいがプラスされたように感じてますね。」
そう生き生きと語る山口さんは、カフェの店長になる前、グループホームにて障がいのある方のお世話をしていたそう。利用者の方の気持ちに寄り添ったケアをするなかで、たくさんの苦悩や気づきがあった。
「働くって、楽しい。」やりがいのある仕事で、少しでも光を。
「障がいをお持ちの方って、汗水たらしながら一生懸命働いても、わずかな賃金しかもらえないんですよね。それでもみんな真面目に働いていて。きつい仕事ばかりじゃなくって、こういうおしゃれなカフェで働いて欲しい、そういう場をつくりたいっていう上田代表の想いに共感しました。」
ここ「café universal」では、障がいのあるなしにかかわらず、みんなが平等に働ける社会の実現を目指している。上田厚登さんが代表を務める、就労継続支援B型事業所「Pastel」にカフェの仕事の一部を委託し、一般企業への就労が困難な方を対象に、社会とのつながりを深めるための支援を行っている。
「シール張りとか、野菜を切ったりとか、仕込みの仕事をお願いしています。将来ここで働くために、接客の練習をしている方もいらっしゃるんですよ。この前ノートを見せてもらったんですけど、『いらっしゃいませは大きな声で』とか、『お辞儀は45度で』とか書いてて。ここで働くために準備を頑張ってるって聞きました。」
「どんな障がいをお持ちの方でも、自分が誰かの役に立つんだって感じてほしいです。人から『ありがとう』って言ってもらえることで、生きる意味を感じてほしい。生きづらさを抱えて苦しんでいる方に、少しでも光を。」
カフェの中には、障がいを持つ方が作った作品が販売されている。丁寧に糸を染めて作ったスマホショルダーやストラップなどは、お客様に人気なのだそう。「好きな仕事で生き生きと働ける社会をつくりたい」、「仕事を通して生きがいを感じてほしい」と願う山口さんや、他のスタッフさんの想いが、あたたかいお店の雰囲気を作り出している。
「キャストさんに切ってもらったレモンのさわやかな香りが、カフェに広がっていて。お客様にもすごく喜んでいただいています。幸せがそうやって広がっていければいいなって思うんですよね。」
「気軽に足を運んでもらって、気さくにいろんなお話をしたり、身近に感じてもらえれば嬉しいです。これからもいろんな方たちとの出会いを楽しみに、キャストさんたちも迎え入れて楽しくこの場を盛り上げていきたいですね。」
自分以外の誰かのことを思いやる、やさしい気持ちに溢れたこの場所でご飯を食べると、おなかも心も満たされます。
手軽に腸活ができて、体にいいことだらけの「麹の腸活ポタージュスープ」。ホットサンドとジュースのセットメニューもありますよ。オーシャンビューの店内で、ぜひご賞味あれ。