いとなみ研究室

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K&L's factory 発達支援ルーム くじらぐも

「発達支援ルーム くじらぐも」だからできる新しい親子支援のカタチ

取材・写真

空を見上げるとどんなカタチの雲が見えるでしょうか?

わたあめだったり、車だったり、くじらが泳いでいるような姿だったり。

いつの時代も子どもたちの豊かな想像力や元気な姿は、家庭の幸せを創るものであり、地域の未来を切り開いていくものです。

今回の舞台である大村市の児童発達支援施設「くじらぐも」は、いつも子どもたちの元気な声が響き渡り、街の未来を輝かせるようなパワーがみなぎる場所。
利用する子どもや親御さんたちのありのままの感情や笑顔が溢れていっています。

そんな施設のなかでは、いったいどんなスタッフがサポートし、どんな支援が行われているのか。お話を伺ってきました。

支援の本質を追求した「くじらぐも」の誕生

長崎県大村市富の原の住宅地にポツンとたたずむ平屋の施設。

なかを覗いて見ると、素朴な外観からは想像できないほど、カラフルで温かい空間が広がっています。

発達障害を持った子どもたちを支援する施設は数多くあるなかで、「くじらぐも」が大切にしていることを、古賀一輝さんが語ってくださいました。

「くじらぐもは、親子支援重視型の通所施設です。発達障害を持った子どもたちがこれからの人生を自分らしく進む力をつけるためには、一番近い存在である家族が現状を受け止め、適切な方向でサポートしていくことが欠かせません。なので私たちは、子どもたちだけじゃなく、親御さんや家族にも学びの場を提供できるという支援のカタチを大切にしています」

「親子支援重視型」という言葉の通り、くじらぐものなかでは、スタッフと子ども、そして保護者の方が一緒になって遊ぶ姿がとても印象的でした。

この施設を造ることにしたきっかけは、古賀さんたちが前職で感じた支援への限界があったのだとか。

「私は以前、子ども支援センターに勤めていて、入院や通所している子どもたちの支援に携わっていました。しかし、医療の枠組みでは、どうしても子どもを中心に支援が進んでしまい、親御さんと深く向き合う時間は取れなかったんです」

「例えば、1回45分の支援の繰り返しのなかで、子どもたちの成長が大きくみられたという経験は残念ながら多くはありませんでした。毎回最後に「ご自宅でもこんな風にしてくださいね」と親御さんに伝えても、実行できるかどうかには歴然の差があったからです。子どもたちにどれだけ良い声掛けができたとしても,親御さんたちに「先生だからできるサポートであって、私たちには再現できません」というスタンスを取られてしまうと、子どもたちの成長を引き出すことは難しくなってしまいます」

「極端に言えば、こんなに遊具がたくさんある遊び場がなかったとしても、親御さんが悩みを吐き出して、子どもとどう向き合っていけば良いか学ぶ場さえ作れれば、それだけで支援の力は大きくなります。なぜなら、私たちスタッフが子どもたちに関われるのは施設に通ってくれる時間だけ。子どもたちと向き合う大部分は家族が担っているからです。そう思ったとき、保護者の方とほとんど話す時間が取れない医療の場にいては、結果的に支援をしたことになりきれないことに気づいていきました」

笑顔も涙も支援の証

家族にまで踏み込んだ支援に力を入れている「くじらぐも」。

子どもたちが支援を受けている間、別室で他のスタッフが保護者様としっかりお話をする時間を作ったり、保護者様も一緒に遊んでもらうことで子どもたちの特性理解を深め、関り方への気づきを生み出すことに力をいれているのだそう。

実際に保護者様にも向き合っていくなかで、家族支援の必要性を強く実感してきたといいます。

「面談を行うと、涙を流しながら話してくださる保護者さんも多いんです。考えて見れば当たり前ですが、ただでさえ不安のある子育てのなかで、特性のある子どもたちと向き合わなければいけない不安やストレスは計り知れません。だからこそ、その感情を吐き出してもらうことがスタートなんです」

 

笑顔をつくるだけじゃなく、時にはぶつかり、時には涙を流して吐き出すことも大切な支援だと考えているくじらぐも。

古賀さんたちには、そんなことを実感した印象的なだったエピソードがあるそうで…。

「感情表現が苦手なダウン症のお子さんとママの話です。子どもさんのことも課題でしたが、何よりお母さんが過剰に守りに入っていて、活動に積極的になれていない状況でした。そんななかで、お母さんの気持ちにも寄り添いつつ、お子さんを支援の遊び場に誘導してみたんですけど、お子さんが不安を感じて泣き出してしまって。それを見たお母さんは「泣いているのでもうやめます」と言って支援から降りてしまったんです。結局うちの施設には2回ほどしか来られず、後に他の施設に移られたことを聞きました」

「このことを受けて、笑顔になることだけが支援の正解ではないことを、改めて親御さんたちに丁寧に伝えるようになりました。もちろん子どもたちが笑ってくれたら最高だけど、泣いたり怒ったり、支援のなかで表れる感情はどれもとても大事なものなんです」

子どもも親も、感情を外に出して現状を受け入れることが成長への第一段階。

支援が終わったあとも家族が自走していけるような関り方をしていきたいと話してくれました。

「情報が入り混じる今の時代、子育てはますます難しいものになっています。子どもをどう見守ればよいのか、その距離感が取りづらくなっているため、過保護的か放任的かのどちらかに傾いている家庭が多いんです。だけど、本当はその真ん中くらいでいる必要があるんです」

「もちろん大けがは防ぐ必要があるけど、多少の怪我をしたり、子どもだけで冒険してみたり。子どもの可能性を奪わないことの方がよっぽど大切です。だからくじらぐもでは、子どもたちが遊んでちょっとした怪我をしたり、その子の特性があらわになることも、支援の大切なプロセスだと考えています。その先で、私たちが子どもにどう対応していくのかをしっかりと間近で見てもらい、親御さん自身が「こんな風に子どもと関わっていけば良いのか」と学んでもらえもらえる体制をつくっています」

楽しむ力がスタッフと施設の未来をつくる

施設にお邪魔して何より印象的だったのは、子どもたちよりはつらつとしたスタッフの皆さんの姿でした。

その根源には、古賀さんのブレない軸があるといいます。

「私が持つ「自分たちが楽しみながらやる」という芯はどこまでもブレません。もちろん運営上は大変なことも多いんですけど、私たちがやりたい支援を体現化した施設なので、支援に関わるときは楽しく笑顔になれるように「元気スイッチON!でいこう!とみんなに伝えています」

「立ち上げ当初はいろんな方がいましたが、今はそんな私の理念に共感してくれる人たちが自然と残ってくれていて、ここ数年で最強のメンバーになってきたなと思います(笑) やっぱり私たちスタッフがどんよりしていては何も始まらないので、明るくポジティブなスタンスは変わらずにいたいですね」

さらにくじらぐもは、スタッフに対しても成長できる職場環境をつくることに力を入れているそうです。

「人は一日の活動時間の半分以上を仕事先で過ごすじゃないですか。仕事を楽しまなきゃっていう話はよくあるけど、それを頭で理解するだけじゃなく、どれだけ心で、本質で理解できるかが大切なんです。せっかくここのスタッフとしてご縁あってたどり着いているんだから、働くことを通して幸せややりがいに“気づき”をもたらせるような職場環境を提供したいと思っています」

“気づき”が溢れる場所であるために

「スタッフももちろんですが、支援を行っていくうえで大切なのは“気づき”だと思います。いくら私たちが良いアドバイスをしても、それを押し売りしているだけだと根本的な変化につなげられません。子どもも保護者も自分自身で“気づき”を持ち、共に成長していけるような関わり方が必要です。くじらぐもはこれからも、私たちスタッフも成長しながら、子どもたちとその家族に温かい支援を提供できる場所であり続けたいと思います」

くじらぐもで行っている支援は、子どもと親が共に学び成長していく過程そのものです。

支援を望んでいる方も、子どもたちの未来をつくる仕事を探してる方も、この場所に飛び込めばきっと想像を超える明るい未来が開けてくるはずです。

 

その他の記事は下記からご覧になれます。

くじらぐも

会社情報

会社名:
K&L's factory 発達支援ルーム くじらぐも
所在地:
〒856-0806 長崎県大村市富の原906−1−2
Tel:
0957-46-3396
Website:
https://masterpiece1689.wixsite.com/kujiragumo1689

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