いとなみ研究室

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ほかほかのお昼ごはんで、スタッフのおなかを満たしましょう。上田皮ふ科の社員食堂「スナックPΛΛK」

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2024年5月12日、大村市のクリニック上田皮ふ科は拡大移転し、「上田皮ふ科PΛΛK」へと生まれ変わった。医療業界では受診率の低下が問題視されている中、誰にでも開かれた公園のように、気軽に立ち寄れるクリニックを目指す。

 今回紹介するのは、働くスタッフのための社員食堂「スナックPΛΛK」。ピンクのネオンライトが光るレトロな看板は、たくさんの会話があふれるスナックのような場所にしたいという上田院長のアイデア。コンビニのパンやカップ麺で昼食を済ませるスタッフの様子を見ていた院長は、移転後のクリニックでは社食をつくろうと構想していたそうだ。

備え付けのキッチンで料理された出来立てのお弁当が、そのまま目の前のテーブルに提供される。取材日のメニューは、オムレツ、サラダ、トマトとアボカドの和え物、オレンジとブドウだ。

「うわーいいにおい!」「今日もおいしそ~」午前の診察を終えておなかをすかせた皆さんは、出来立てのご飯に心を躍らせる。並べられた料理を和気あいあいと盛り付ける様子は、なんだか学校の給食を思い出す。

 クリニックスタッフ「温かいものを食べられる、みんなで同じものをおいしく食べられる。普段は家族のために料理をつくるほうなので、つくっていただくのがすごい新鮮で。毎週金曜日は社食に甘えさせてもらってます。すごい有難いです。」

 上田院長「三ツ星の高いレストランよりも、食堂のご飯が一番ですね。どっちを食べたいかと言われたら、こっちを食べたい。活力になってますし、今週は何のご飯かなって楽しみです。おかげでスタッフ同士の会話が増えていますしね。」

料理の腕を振るう中尾さんは、保育園の園長先生を務めた後、掃除スタッフとして上田皮ふ科に勤務していたそうだ。差し上げで配った手作りスイーツが評判で、上田院長から食堂の料理を作ってくれないかと声を掛けられた。

 上田院長「長崎では、多くの企業が人手不足ですよね。でも私は、人が少ないのではなく、働く場がないだけだと思っています。定年退職されたシニアの方も、毎日はきついけど、週何回かだったら働けるかなとか。そういったニーズに柔軟に対応することが必要かなと思います。」

「シェフの方も、私たちがおいしそうに食べてるのを見て、もっとおいしいのをつくらんといかんって思われるそうです。予算の中で栄養バランスの取れた献立を考えて、手先を動かす。働くことが健康維持だと言われていました。」

急な事情でスタッフが子供を連れてきたときは、シェフの方がお世話をするという一コマもあったそう。安心して子供を預けられるほどの信頼関係が築けている証だ。6人のお孫さんを持つベテランシェフのおかげで、お子さんも楽しそうでしたとのこと。

食事中もたくさんの話し声が聞こえてきて、とってもにぎやかな食堂だ。仕事の相談から、プライベートの話まで。誰とでも積極的にコミュニケーションを取るみなさんは、仲がすごくいい。

 「うちはスタッフが54人いて、他のクリニックと比べてもかなり多い方です。人数が多くなると、仲がいい人同士で固まったり、年齢の壁があったりして、なかなか話さない人もいるかもしれないですよね。 でも、食べると口を開くわけなので、会話が生まれる。家族や友達に相談しにくい話でも、一緒に働く仲間には意外と相談しやすかったり。この前は、シェフの方がスタッフの恋愛相談にのっている様子も見かけましたよ。」

「みなさん仲がいいのは、社食のおかげなんですね。」そんな話をしていると、上田院長が「Company(会社)」という単語の語源を教えてくださった。

Company(カンパニー)」は、ラテン語の「com(共に)」と「panis(パンを食べる)」に、仲間を表す「-y」がついた単語で、「一緒にパンを食べる仲間」という意味があるそうだ。

ここでいう「パン」とは、教会のミサで食べるパンのこと。つまり「company」とは、同じ信仰を持ち、いざというときには助け合う人たちのことを指す。

上田皮ふ科では、スタッフ全員に『クレド』という医療理念を共有し、行動の指針としている。この『クレド』に共感したスタッフたちが集まり、同じ理念のもとで仕事をすることで、仲間意識が生まれるという。さらにスタッフの団結力を高めているのが、みんなで一緒にごはんを食べる時間だ。

7月末には、この社員食堂でスタッフ研修が行われた。講師は、日本・パリで4つの店を経営する黒岩功シェフ。スタッフの目の前で、誰でも簡単にチャレンジできるフレンチを披露していただいた。

料理教室の後は、黒岩シェフによる講演会。世界中を旅しながら夢を叶えるまでの苦悩や努力を語る黒岩シェフから、どんなことにも果敢に挑戦する勇気をもらったと話した。

「美容クリニックでお料理教室って、すごく珍しいですね。」上田院長は、講演会や研修、他にもスタッフ一人ひとりの興味に合わせた情報などを頻繁に共有してくれるそうだ。

クリニックスタッフの方「常に学びを大切にされています。もちろん皮ふ科なので美容のことが多いですけど、それ以外も役立つ研修や講演会などの情報を教えていただいたり。惜しみなく出してくださって、すごく有難いです。」

おいしいご飯からパワーをもらったスタッフのみなさんは、午後からの診療にも丁寧に対応し、患者様の心を満たす。せわしなく働くスタッフのために、愛情をこめて料理をするシェフのお二人も、上田皮ふ科を支える大切なメンバーだ。

上田院長のスタッフを思いやる気持ちから生まれた社員食堂「スナックPΛΛK」は、スタッフのおなかと心を満たし、「午後からも頑張れ!」と背中を押してくれるような場所だ。

会社情報

会社名:
上田皮ふ科
所在地:
長崎県大村市小路244−7
Tel:
0957-47-6707
Website:
https://uedahifuka.com/

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