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株式会社 フルカワ
「“好き”が、動き出す力になる。」オカシノフルカワ 専務 古川 一弘さん
オカシノフルカワ・古川一弘専務の“ジブンゴト”と能動性
長崎県・大村市。のどかな風景の中に、地元で長年親しまれてきた菓子店「オカシノフルカワ」がある。
その屋台骨を支える専務、古川一弘(ふるかわ かずひろ)さんは、ひとことで言えば“趣味人”。
でもその趣味、ただの趣味では終わらない。
「どれだけ遊んでもいい。でも、仕事にはちゃんと来なさい」
それは、古川さんが40年以上、守り抜いてきた“教え”だった。
遊ぶときは本気、働くときも本気。彼の人生は、“楽しい”という感情から始まるエンジンでずっと走ってきた。
64歳。今も現役でフルスロットル。
「楽しいと思ったら、やってみる」
能動的という言葉をまさに体現してきたその人生は、私たちに「動くこと」の意味を問いかけてくれる。
子ども時代の「好き」がくれた発見と誇り
佐世保市大宮町で生まれ、6歳頃までを過ごした古川さん。
その後に引っ越した大黒町で、彼の“器用さ”は早くも開花する。中でも記憶に残るのが、図工の授業でつくった「竹の西海橋」だ。
ボンドで固定し、色を塗り、お湯で竹を柔らかくして曲げる。
「最初は火で炙ったけど焦げちゃってね。お湯にしたらすっごく綺麗に曲がるんだよ。」
完全に小学生のDIY職人である。
その完成度は高く、校内で入選、市内でも上位に入り、寄贈の申し出まで来た。けれど彼は「手元に置いておきたくて」と断ったという。
やってみたい。どうしたらできるか考える。やってみる。
このときすでに、彼の“能動性の原型”は完成していた。
“やってみたい”が行動に変わる、高校時代の衝動
中学時代は、サッカー、テニス、体操に中学校のナイトプール(!)まで幅広く活動。少々やんちゃなこともしていたようだ。
友人とスケートやプラモデルに夢中になり、手を動かすことが日常になっていた。
高校では簿記と珠算を学ぶ商業科へ。勉強は得意ではなかったが、必死に学び3級と2級を取得。
それもそのはず、古川さんには「バイクが欲しい」という強いモチベーションがあったからだ。
「どうしてもバイクに乗りたくてね。バイトして2年かけて、自分で買ったよ」
その頃の古川さんの辞書に、“無理”という単語はなかったのかもしれない。
欲しいから、動く。
ただそれだけ。シンプルだけど、圧倒的な推進力。
あなたにとって、行動の理由はなんですか?
何かを始めるとき、私たちはつい「意味」や「正解」で考えてしまう。
でも古川さんは違う。やりたいかどうか。それだけで十分だった。
たとえば、好きな服を着るために働き、ステレオが欲しくて10年ローンを組んだ。
ちなみに当時はアフロヘアで出社していた。「個性爆発」どころの話ではない。
車も、ステレオも、服も。そこには「生活を楽しむ」という意思があった。
遊びと仕事、その境界線はどんどん曖昧になっていく。
それこそが彼のスタイルだった。
「動きながら考える」。
好きなものを追いかけていたら、仕事もついてきた。
そう言わんばかりの人生だ。
愛すべき“クルマ中毒者”としての横顔
さて、ここで改めて触れておきたいのが、古川さんの“車愛”である。
「ちょっと好き」とか「詳しい」なんてレベルではない。
若い頃から様々な車に乗り継ぎ、外装・内装問わずカスタムに没頭。
「今ならアウトかもしれないけどね」と笑いながら、当時の“やんちゃな改造話”もちらり。
“好き”を手で作り上げていくことが、彼にとっての「表現」だった。
車という「遊び道具」を通して、町へ出かけ、友人と語らい、交友を広げる。
それはまるで、エンジンの熱が彼の人生そのものをあたためていたかのようだ。
営業の40年と、変わらぬ“動き出す力”
高校卒業後、株式会社フルカワに入社。配送部署で働き数年、営業部署に移動になった。そして約40年。
商品配送や陳列など膨大な業務に苦しんだ時期も、「好きなことを楽しむために、仕事はちゃんとやる」の精神で乗り越えてきた。
効率的に進める工夫を重ね、仕事と向き合った。
「趣味のゴルフや釣りが取引先との関係を築く上で活きてきた。」
気づけば、取引先との信頼関係の中に、趣味が溶け込んでいた。
“仕事は仕事、遊びは遊び”と分けるのではなく、“人生そのものを楽しむ”姿勢が、彼を支えていた。
ちなみに釣りは大好きだが、船は苦手らしい。
そんな弱点すら、憎めないチャームポイントだ。
あなたには、没頭できるものがありますか?
気がつけば、何かに夢中になることを忘れていませんか?
子どもの頃は、理由もなく「好き」だけで動けた。大人になった今、それをもう一度思い出してもいい。
「没頭できる何か。それを見つけるのが、やっぱり大事かもしれない。」
古川さんの言葉は、私たちに問いかけているように感じる。
好きなものを大切にしていますか?
“自分の人生”を、ちゃんとジブンゴトとして動かしていますか?
そして、次の世代へ
いま古川さんは、4〜5年かけて後任への知識継承を計画している。
その背中には、仕事と遊び、趣味と責任が全部詰まっている。
恐らくこれからも彼は変わらない。
気になる匂いのする方へ、なんだか面白そうと感じた方へ、ふらりとハンドルを切っていく。
その道の先には、きっと新しい出会いと発見が待っているのだろう。
「ジブンゴト」こそが、人生を動かす。
“好き”という感情が生んだ能動性が、やがてキャリアをつくり、人生をかたちづくっていく。
古川一弘さんの生き方が、それを教えてくれる。