続けるには、常に「楽しむ」気持ちを。株式会社フルカワ・商品管理プランナー・宇都勝洋さん。

研究対象企業

株式会社フルカワ

ジャンル

記事クレジット

取材・写真・文

仕事を楽しんでやれている人は、どのくらいいるだろう。「好きなことを仕事に」とは言うけれど、なかなかそう言ってられない時もある。だけど、できるだけ楽しむ気持ちを持って仕事に取り組む人が隣にいるだけで、その場の雰囲気はより明るくなるんじゃないだろうか。

フルカワに入社して15年目の宇都勝洋さん。現在は商品管理のプランナーを務めている。物腰柔らかく、話をうんうんと親身になって聞いてくださる様子から、とても優しくて真面目な方なんだという印象を持った。

そんな宇都さんが仕事をする上で大事にしていることは、「楽しんでやる」ということ。「楽しくないと続かない、楽しむにはどうするか常に考える」と語る宇都さんはこれまで、どんな場面でも自分なりに楽しみを見つけて仕事に取り組んできた。「表立って何かをするタイプではない」とのことで、少し緊張した面持ちで取材に答えてくれた。普段はあまり語られることのない宇都さんのこれまでと今を、一緒にたどっていこう。

なんでも1番目!

宇都 引っ込み思案で、前にしゃしゃり出るっていうことは全くなく。兄弟で遊ぶか、一人で遊ぶか、そっちのタイプだったんです。

名古屋に生まれ、3歳の時に長崎県に引っ越してきた。特に夢中だったものは?と聞くと、「自転車かな〜」とのこと。小学生の頃から、よく友達と10キロ以上をツーリングしていたという。遠くの町までぐんぐん進むところが好きだったそうだ。

宇都 私、苗字が”ウト”なんで、出席番号は大体1番なんですよ。それが嫌やった…。音楽の授業で縦笛吹けって言われて、他の人はその間に練習できるのに、こっちはいきなりぶっつけ本番だし、全然吹けなくて怒られたし…。卒業式の練習なんかもね、いつも練習台にさせられて、ああじゃないこうじゃないって言われながら。名前自体が嫌いだったんです。

その他にも、幼い頃から自分にコンプレックスのようなものを抱えていたという。

宇都 3月生まれなので、クラスの中でも早生まれなんです。何ヶ月か先に生まれただけでも、子供ながらにギャップを感じてたのかな。そういうわだかまりがずっと残ってて、あんまり好きではなかったかもしれないです。

中学校では、陸上に打ち込んだ。「学校を離れて、いつもと違うコースを走れる土曜日の練習が好きだったな」と当時を振り返る。それは、小学生の頃からずっと好きだった自転車と似たようなものだったかも。

高校に進学すると、新たな趣味と出会った。それは「音楽」。1980〜90年代に大ブームを引き起こした、TM NETWORK、B’z、山下達郎などなど…。その魅力に惹きつけられた宇都さんは、お小遣いでライブ会場に足を運び、心を揺らした。今も1年に5〜6回はライブに行くそうで、これまでに行ったライブ数は、なんと250回を超えるという。

宇都 映画館とは違う、やっぱり生の良さがあるね。ライブ時間は2時間程度ですが、行くと決めてから、ライブ後一週間は余韻に浸れて、楽しい。

ナンバーワン オブ、ナンバーワン

高校卒業後は、県外の建設会社に就職した。当時20万社ほどあると言われていた建設業界で、上から50番目ほどの売り上げを収めていた大手企業だったという。道路やゴルフ場など、全国規模な展開をしているなか、宇都さんが担当したのは、トンネル建設の事務の仕事だった。なんとその会社は、建設機械の所持数が、日本一どころではなく「東洋一」。トンネル事業においてはナンバーワンと言える会社だった。

真面目にコツコツ仕事を積み重ねていくと、その分周りからの評価は上がっていく。そんなところに仕事の面白さややりがいを見出した宇都さんだった。

宇都 私がなんでも率先してやってたんで、最終的に言われたのは、お前すごいなと。なんですごいかって、結局は、会社の中でもナンバーワンのトンネル事業で、お前が一番できてるじゃないかと。ってことはお前もナンバーワンなんやと。

上司からのその言葉が、宇都さんをさらにやる気にさせた。しかし、打ち込めば打ち込むほど、責任の重さや業務量も比例して大きくなっていった。

宇都 出張、移動が多かった。最高で13日間毎日、枕が変わったんですよ。福岡、対馬、また福岡、それから大分に行って、帰ってきたかと思えばまた熊本行って…。ふと夜中起きたら、ここどこ…?っていうのがね。それで嫌気さしたのかな。何やってるんだろう、本当にそういう生活でいいのかって、自分の中で問いが生まれて。

その忙しさから、子供にも月に2〜3回ほどしか会えなかったという。この環境には耐えられないと、15年間勤めた会社を辞める。それからは地元の長崎に戻り、とある工場に五年間勤めた。リーマンショックの影響で宇都さんが自ら手を挙げ、離れる決断をしたという。

会社の支えになれるように

フルカワへ入社したのは、38歳のとき。配送の募集をしていたのが目に止まり、応募したと言う。「そっか、30代で入社しとるとか…」と、振り返れば長い年月が経っていたことに気づく。

宇都 ちょうど今、転機かな。建設会社におったのも、15年くらいやったけんか、ちょうど一緒くらいか。

現在は商品管理のプランナーを務める宇都さん。商品の発注をしたり、メーカーからの案内を社内へ流したりして、1,000種類以上ある商品管理を担当している。

宇都 私はどちらかといえば、サポートが1番好きなんで、前に出てやるっていうよりも、会社のバックアップ的な存在になれるようにと思ってやっています。

仕事をする上で大切にしていることは?と聞くと、「浅くてもいいから、広くを知っとかなあかんと。」と宇都さんは言った。

商品管理は、会社の中で「モノの流れのハブ」にいる。倉庫、営業、経理、メーカー、小売店、全てと関わるポジションだからこそ、自分の担当領域だけでなく、会社の全体の流れを理解しておくことが仕事の精度を上げるのだ。メーカーと小売店の間に立って商品を仕入れ、販売する問屋にとって、商品管理は会社の”要”となる。会社が安心して商品を売れるのは、商品管理の方が商品をきちんと準備しているからだ。

同じ日々の中でも

そんな宇都さんは、今年に入ってひとつ大きなことを成し遂げたという。それは、「ダイエット」だ。

宇都 もう、ほんと太っとった…。商品管理を担当することになってから、どうしてもメーカーさんから、新商品だからこれ食べてって言われるんですよ〜。ついついつまみぐいしよったら、もうお菓子太りですね。開けんでもいいのに、メーカーさんはピッて開けて、は〜!開けなくていいのに…。みたいな。

3年ほど前に腰を痛め、杖をつく生活をしていたという。健康的な体を目指して去年の春からジムに通って何ヶ月か続けるも、何の成果も出ず。それから運動とともに食生活も見直すようになると、10ヶ月ほどで11キロの減量に成功した。毎日体重を測り、記録を残している画面を見せてくれた。「このポンッて上がっとるのは、週末リミットを外して爆食いしてるから笑」だそうだ。しかし確実に体重は落ちている。新しいことを始めようと思っても、なかなか続かないこともある中、決めたからにはコツコツ続けようという意思を貫いた結果だ。

最近の目標は、地元で開催されるウォークラリーを完走すること。なんと50キロを歩くイベントだという。

宇都 参加者を見ても、50代〜60代、中には70代の方もいらっしゃるんです。どこまでやれるか分からないけど、今からでもできることをやっていきたいなと

そのために今は、下半身を強化中。お昼休憩と仕事終わりに少しづつ歩いているそうだ。「今日も仕事終わって、夕方歩きに行きます」とのこと。そんな宇都さんは、歩くことが習慣になって見えてきた景色があるという。

宇都 風感じながら、音楽聴きながら、周り眺めながらとかね。野菜を植えてらっしゃる方もいるんで、育ち具合を見ながらとかね、そんなこと感じながら。毎日同じことやって、家に帰るのもいいんだけど、やっぱり自然の流れも楽しみながら。

のんびり歩きながら、野菜がぐんぐん育っていく様子を眺めたり、肌を撫でる風がひんやりしていくのを感じたり。毎日同じリズムを生きる中で、昨日とは違う気づきを積み重ねる時間が、宇都さんの日々を照らすものとなっているのだろう。そんなお話からも、「楽しむ」ことを忘れない宇都さんの信念が見える。

役割を楽しくないと続かない。楽しむには、どうするか常に考える。建設会社での事務も、工場も、商品管理も、どんな場所でも自分の中で楽しみを見つけられたからこそ、コツコツ続けることができたのではないだろうか。

“楽しむ”という姿勢が、続ける力になる――そのことを、宇都さんの姿から改めて教えられた。