
「つくりたい」が、みんなのものになるまで。オカシノフルカワ、ひとつの紙袋から始まった物語。
一枚の紙袋がある。
青を基調に、オカシノフルカワらしさが詰め込まれた紙袋。
今では会長が持ち歩き、高校生向けの企業説明会では会社案内を入れて配られ、オンラインショップでは紙袋だけを購入する人も現れた。
けれど、この紙袋が生まれるまでの時間をたどっていくと、単なる「商品開発」の話ではなかったことがわかる。
始まりは、ひとりの社員の「あったらいいな」だった。
「こんな紙袋をつくりたい」
話は、今から数年前にさかのぼる。
オカシノフルカワには、部署や役職を越えて社員が参加する「クラブチーム活動」がある。

その活動の中で、田中さん、福田さん、本田さんたちが考えたのが、オカシノフルカワのオリジナル紙袋だった。
きっかけは、とても個人的な思いだった。
福田さん「私はお土産を持っていくときに、自分たちの商品をこの袋に入れて持っていきたいと思っていたんです」
カステラ屋さんの袋を見れば、一目でどこのお店かわかる。
そんなふうに、街を歩いているだけで「オカシノフルカワだ!」とわかる袋があったらいいな。
その小さな「つくりたい」から、紙袋のアイデアは始まった。

当時のクラブ活動では、デザイン案を考え、実際に紙をつなぎ合わせて試作品まで制作した。
社内で発表すると評判も良かった。
けれど、クラブ活動は基本的に「案を考え、発表する」ところまで。
実際に会社の商品として世の中に出すには、そこから先に、もうひとつ大きな壁があった。
紙袋のアイデアは、一度そこで止まった。
それでも、「いつかつくりたい」という思いまでは消えなかった。
思いを置いておいたら、場所ができた

それから時が経ち、約1年前。
私たち日々研究所もオカシノフルカワさんとさまざまな話を重ねる中で、新しく「未来開発チーム」が生まれた。
クラブ活動とは少し違う。
やってみたいことを考えるだけではなく、可能であれば実際に形にするところまで挑戦してみるチームだ。
参加は任意。集まったのは、福田さん、池田さん、高橋さん、田中さん、中村さん、本田さんをはじめ、それぞれ異なる部署で働くメンバーたちだった。
最初の顔合わせ。「このチームで何をしたいですか」

一人ひとりが話していく中で、ずっと心の中に置かれていた言葉が再び出てきた。
「紙袋をつくりたい」
こうして、数年前のクラブ活動で生まれたアイデアが、もう一度動き始めた。
思いというものは、不思議だ。すぐ形にならなくても、持ち続けていると、どこかで場所と出会うことがある。けれど、ここからが本当の始まりだった。
「つくりたい」だけでは、つくれなかった

実際の商品としてつくる以上、会社のお金も動く。
何枚つくるのか。
誰が使うのか。
いくらで販売するのか。
宣伝としての役割はどうするのか。
色、大きさ、デザイン、印刷方法。
次々と考えることが出てきた。
「最初は、とにかくつくらせてほしい、という気持ちでした」

そんな言葉も出た。
けれど、思いだけで進めるわけにはいかない。
ターゲットを考え、販売方法を考え、見積もりを取り、会社として成立する形を探していった。そして、もうひとつ想像以上に難しかったことがある。
「みんなでひとつを決めること」だった。
積極的な人が集まっているからこそ、意見が出る。
それぞれの部署から見える景色も違う。
良くしたいと思えば思うほど、選択肢は増えていく。

なかなか着地しない。
話し合っても、また戻る。
「あの頃は、本当にまとまらなかったですね」
今では笑って話せる。けれど当時は、チーム全体に悶々とした時間が流れていた。
「最後はリーダーが決めたらいい」

そんな中、転機が訪れた。紙袋を最初に「つくりたい」と言い出した福田さんが、チームのリーダーを務めることになった。
けれど、リーダーになったからといって、急に答えが見つかるわけではない。
むしろ責任は増えた。
部署が違うメンバーの日程を合わせるだけでも難しい。
みんなの意見を聞けば聞くほど、決めることが怖くなる。そんなある日、中村さんと話していると、こんな言葉をかけられたという。
「まずは、自分がどうしたいかを決めてください。リーダーが決めたら、みんなついていくから」その言葉に、背中を押された。
全員の意見を同じにすることが、リーダーの仕事ではない。
意見を聞いた上で、自分たちはどこへ行くのかを示す。

そして、決めた人を周りが支える。少しずつ、チームの空気が変わり始めた。
営業の視点から販売方法を考える人。SNSでどう伝えるかを考える人。
デザインの割り付けを担当する人。離れた場所にいてもグループLINEで提案する人。
誰かに課題が出れば、別の誰かが自然と補う。最初から役割が決まっていたわけではない。

一緒に悩んだからこそ、それぞれの得意なことが見えてきたのだと思う。
それはまさに、フルカワさんが大切にしている「生かし合う」という姿だった。
袋をつくっていたはずが、人が育っていた
そして、紙袋は完成した。けれど、今回の取材をしながら、私が一番面白いと感じたのは完成した紙袋そのものではなかった。
「袋をつくっていたはずなのに、チームができていた」ことだった。
途中には、なかなか思い通りには進まず苦しい時間もあった。
みんな仕事が忙しい中、30分、40分と時間をつくって集まった。

一度決めたものを覆したこともあった。
締め切りに追われながらデザインを修正した。
それでも、誰か一人に任せるのではなく、みんなで向き合い続けた。
大人になってから、これほど誰かと一緒に悩みながら、ひとつのものをゼロからつくる経験は意外と少ない。
だからこそ、この一年で得たものは紙袋以上に大きかったのではないかと思う。
人が動ける場所を、会社がつくる

オカシノフルカワには、
「人をつくり、生きる場をつくり、笑顔をつくる」
という言葉がある。
心づかい。
楽しむ。
生かし合う。
言葉として掲げることはできる。

けれど、それを会社の日常の中につくることは簡単ではない。
通常の仕事がある中で、クラブ活動を行い、未来開発チームをつくり、社員が挑戦するための時間をつくる。
すぐに売上として見えるものばかりではない。
それでも、「人がやってみたいと思うこと」に場所をつくり、任せてみる。
会長、社長、そして社員のみなさんが長い時間をかけて、人を大切にしてきたからこそ、この紙袋は生まれたのだと思う。

最近では、会長がこの紙袋を毎日のように持ち歩いているという。
つくったメンバーにとって、それが何よりうれしい。
自分たちが苦労してつくったものを、会社を長く見てきた人が自然に使ってくれている。
その姿そのものが、自分たちの挑戦を受け止めてもらえた何よりの証のように思えた。
完成は、スタート

紙袋が完成してひと段落ついた。
しかし、メンバーは口をそろえる。
「ここからがスタートです」
どうすれば、もっと多くの人に持ってもらえるのか。どんなお菓子を詰めれば喜ばれるのか。
どうすれば販売につながるのか。すでに次の試行錯誤は始まっている。
うまくいかなければ、また変える。却下されたら、また考える。

それでいいのだと思う。
今回、一人の「つくりたい」から始まった思いは、何人もの思いになり、やがて会社のひとつの商品になった。
そして次は、この経験をした人たちが、別の誰かの「やってみたい」を支える側になっていくのかもしれない。
そうやって、一人、また一人と挑戦する人が増えていけば、会社の空気も少しずつ変わっていく。
紙袋が街に広がっていくように、その経験もまた、人から人へ伝わっていく。

「こんなこと、やってみたいんです」
そんな誰かの小さな一言を、次は誰が拾うのだろう。
オカシノフルカワの未来は、案外、そんな何気ない一言から始まっていくのかもしれない。
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