子どもたちの「根っこ」を育てる。つきっこ保育園 吉永 満也さん・小野 奏さん

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松浦市

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つきっこ保育園が大切にしていること

「小さい頃の記憶ってあまり覚えていませんよね。でも、楽しかったとか、やり遂げたとか、そういう自信は残るんですよね。」

そう話してくれたのは、長崎県松浦市調川町にある〈つきっこ保育園〉の園長兼理事長を務める吉永 満也さん。(以下:吉永さん)

大人になったとき、保育園の頃の出来事を細かく覚えているわけではありません。けれど、友達と夢中になって遊んだことや、何かに挑戦してできるようになった時の嬉しさは、知らないうちに自分の中に残り、その後の人生を支える力になっているのかもしれません。

〈つきっこ保育園〉の理念である「良樹細根」には、こんな考え方が込められています。

大きくて「良い樹」は、見えない土の中に「細かく」、たくさんの「根」をはって立派に自立しています。大切な時期を過ごす保育園として、「生きる喜びと楽しさの根が育つ場」でありたいと願っています。

その理念は園内に掲げられているだけではなく、先生たちの日々の保育の中に息づいていました。

そして取材を通して感じたのは、〈つきっこ保育園〉の魅力は保育の方法だけではなく、そこにいる人たちの温かさにあるということでした。

いつかは地元に恩返しを

吉永さんは生まれも育ちも調川町。

高校までを松浦市で過ごし、大学進学で福岡県へ。大学卒業後、大阪府で飲食関係の仕事に就き数年経ったころ、松浦市へ戻って、家業だったレストラン〈シーサイド小島〉を引き継ぎました。

その後はコンビニ事業を始め、現在調川町にある〈デイリーヤマザキ〉、さらに佐世保市内でも店舗を展開。

飲食店はお父様から受け継いだものでしたが、コンビニ事業は吉永さん自身が始めたもの。弁当事業などにも取り組みながら、さまざまな挑戦を続けてきました。

そんな吉永さんが保育園経営に関わることになったのは6年前のこと。

当時の〈調川保育所〉が民営化されることになり、新たな運営者の募集が行われました。

今まで経営してきた飲食などとは全く違う業種に「不安しかなかったですね。」と振り返る吉永さんですが、周りの人たちから声をかけられたこともあり、応募を決意。

そしてもうひとつ、大きな理由がありました。

それは、自分も、自分の子どもたちも、調川町の保育園で育ったこと。

「地元に恩返しがしたかったんです。」

その言葉には、長年地域で暮らしてきた人だからこその想いが込められていました。

イラストレーターになりたかった保育士

主任保育士の小野 奏さん(以下:小野さん)は、佐世保市吉井町出身。

高校は松浦高校へ進学し、保育の短期大学へ進学。

最初から保育士を目指していたのかと思ったが、そうではなく、小さい頃から絵を描くことが好きで、将来はイラストレーターになりたいと思っていたそう。

美術大学への進学も考えましたが、美術教師だったお父様から「難しいと思う。」との声が。

美術の道を進んでいるお父様だからこその意見に驚きつつ路頭に迷っていると、お母様から「保育士っていう道もあるんじゃない?」と言われます。

考えてみると、ピアノも好き。歌うことも好き。踊ることも好き。そして絵を描くことも好き。

「全部できるじゃないか!と思ったんです。」

そうして保育の道へ進みました。

短期大学卒業後は福岡の幼稚園へ就職し、数年後に退職。福岡市でアルバイトをしながら自分のイラストを販売していたところ、短期大学時代の先生から「新人の先生が急に辞めたから来て」と声がかかり、再び保育の現場へ戻ることになります。

そして、結婚を機に調川町へ移り住み、御厨町の保育施設で勤務。そのなかで出会ったある先生が、後に〈つきっこ保育園〉の初代園長となる先生でした。

「子どものことを一番に考えている先生でした。本当に人が温かくて、一緒にいるだけで幸せになるような存在だったんです。」

その先生が「つきっこ保育園へ行く。」と聞いた時、小野さんも迷わず「私も一緒について行きます。」と伝えました。

「あの先生がいたから今があります。」

そう話す小野さんの言葉からは、今も変わらない感謝の気持ちが伝わってきました。

みんなでつくってきた保育園

〈調川保育所〉から〈つきっこ保育園〉へと生まれ変わった当初、先生たちの多くは以前から働いていた先生たちでした。

そのため、最初はこれまでの保育の流れもありましたが、「せっかく新しい保育園としてスタートするのだから、新しいことにも取り組んでみたい」という思いもありました。

最初の1、2年は、みんなで考えながら進んでいった時期だったそう。

そのなかで少しずつ、目指す方向性がひとつになっていきました。

また、保育園経営が初めてだった吉永さんだからこそ、保育士にとって当たり前だったことに疑問を投げかけることもありました。

すると、「確かにそうですね。」という新しい気づきが生まれることもあったそうです。

そうした積み重ねの中で、今の〈つきっこ保育園〉らしい保育が形になっていきました。

子どもたちを信じる「寄り添い保育」

一般的に、保育士と子どもの割合は、3歳児では子ども15人に対して先生1人が基準とされており、1歳児でも子ども5人に対して先生1人の割合とされています。

そんななか、〈つきっこ保育園〉では、「チーム保育」を掲げ、基準よりも多く保育士を配置しています。

先生の数が多いのは、ひとりの目だけで子どもを判断しないため。

ある先生には困った行動に見えたことも、別の先生から見れば成長の途中に見えることがあります。

だからこそ、先生たちは毎日のように子どもたちについて話し合います。

どんな姿が見られたのか。

どんな言葉があったのか。

何に夢中になっていたのか。

そうした時間を大切にしながら、ひとりひとりに寄り添っています。

「喧嘩はダメなことじゃないんです。」

小野さんはそう話します。

喧嘩は、気持ちの折り合いをつける大きな成長ポイントであり、自分の気持ちを伝える機会でもあります。

「どうしたかったの?」そう聞くと、「おもちゃを貸してほしかった。」など言葉が出てくる。自分の気持ちを言えたことを褒め、「じゃあ次はそう言えたらいいね。」そんなふうに、寄り添っていく。

危険なことや人を傷つけることはきちんと伝える。でも、その子自身を否定することはしない。

「あなたのことは大好きだよ。」

その思いを全身で伝えることを大切にしているそうです。

卒園しても、根を張り、続いていく

ある日、卒園生たちから手紙が届いたそう。

「エイサー楽しみにしてるよ。」

忍者認定試験(運動会)で披露するエイサーを楽しみにしているというメッセージ。

*忍者認定試験についてはこちらの記事で紹介しています。

忍者認定試験の後には、「すごく良かったよ。」という感想も届きました。

今度は在園児たちが「お返事を書く!」と言っているそう。

秋には地域と交流する秋祭りも予定されています。園で育てたお米を収穫し、脱穀し、地域のおばあちゃんたちと一緒に料理を作る計画も進んでいます。

子どもたちの根っこを育てる場所

取材を通して何度も耳にしたのは、「人に恵まれている」という言葉でした。

吉永さんも、小野さんも、自分ひとりの力でここまで来たとは話しません。

先生たちのおかげ。

支えてくれたひとたちのおかげ。

一緒に歩んできた仲間たちのおかげ。

そうした感謝の言葉が自然と口からこぼれます。

子どもたちの根っこを育てたい。

その思いを胸に、今日も〈つきっこ保育園〉には子どもたちの笑い声が響いています。

その声を見守る先生たちの温かなまなざしの中で、ひとりひとりの根っこはゆっくりと育ち続けています。

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